運営者
執筆
- ベビーカージャーナリスト
プロ・ベビーカーレビュアー。ベビーカーを10年間で100台以上押し比べてきた体験談を紹介。年間100件の購入相談に応える。講談社や晋遊舎の記事監修など
見習い
- 初産の妻のためにベビーカーを勉強中♂
とあるリス園の出身。妻メーサが少し早めの里帰り出産で実家へ帰ったため時間ができたのでベビーカー調査に乗り出す。代官山を練り歩いていたところ隊長(管理人パパ)と出逢い、話を聞くうちに感銘を受けて弟子入り
「もうちょっと起きんのかいな・・・」
夜の話でも、朝の話でもない。
ベビーカーのシートリクライニングの話だ。
国内市場で主流なのは赤ちゃん(1歳までの乳児期)をターゲットにしたファーストベビーカー。
この乳児をまず幸せにしてあげるタイプのベビーカーの多くが、(子の)上体を寝かせられても(90°垂直近くまで)起こせないものである。
主流は120°前後。
悪いものだと140°で目一杯です、、というものも。
「で、これの何が悪いか?」であるが、子どもは成長する。
赤ちゃんは腰が座り、前の景色が見たくなる。
「あっ!ブーブー!!」
「建設現場のクレーンだ!(言わないが)」
外の世界に興味津津だ。
当然ながら、自分で上体を持ち上げられればいいが、腹筋がまだまだ無いうちは自分では起こせない。
上体を起こせたとしても、フロントバー(おつかまりバー)がないタイプでは、親の急発進の度に後ろにストン!と後傾するだろう。。
ということで、時期で言えばそうだな「8ヶ月~15ヶ月ぐらい」は背もたれを垂直近い角度まで上げられるものが良いベビーカーだと言える。
ただ、この時期はちょっと早い人ならセカンドベビーカー(多くがB型背面式ベビーカー)への乗り換え時期。
背面式ベビーカーというのは、そもそも幼児期(2歳~4歳ぐらいかな)のための乗り物で、赤ちゃんのための乗り物というよりも、歩くのが楽しくなった子どもが「ちょっと疲れたから休む。。」と帰ってきた子を休ませるためのものになる。
だから各社から発売のベビーカーもリクライニング角度はそこそこで、傾斜のゆるいバギータイプが多い。
自分で起きることが見込まれているのである。
そんなベビーカーであるが、最近はサイベックスから発売の超コンパクトベビーカー『リベル』の人気もあって、年々B型ベビーカーへの乗り換え時期が早まっているように感じる。(実際に有料相談室利用者の声でもそうだ)
ここで問題が生じているのだ。
先ほどと話が重複するが、「起きたくても起きれない」=>「姿勢がごにょごにょっと悪くなる」=>「ベビーカーつまんねっス」=>「乗るの嫌っス!」の連鎖が生じる。
たまに見ますね!ママが手を焼いちゃうあれですね。
意外に「えっこんなこと!?」も気づかれてないけどな。
これは困る。。
B型(生後7ヶ月からOK)とうたうもんだから乳児さんなのに乗せてしまう。
けれど、このタイプのベビーカーの真価は幼児期にこそ発揮される。
ちょっと早い。いやだいぶ早い。
足りてない背もたれの角度をどうしたら補えるか?
私は考え続けていた。
考えたのは、「ベビーカーのシートはフレームに固定されているけれど、上体としてはそれにぶら下がったハンモックのような作りだ。しかし、背板はちゃんと用意されてある。だったら、折り畳みの時に邪魔になるのを承知で背板の後ろ側にテンションのかかったベルトを用意して、それを引き締めることでシートを背板ごと上方に引き上げることが可能ではないか?」であった。
着想を得たのは、大型便の宅配業者が荷台の中で荷物の固定用に使うラッシングベルト。
不可逆性のベルトで、一度引き締めたら固く固定され逆方向に戻らないようにできている。
この力を使って、まるでシートの背面部を横切るつっかえ棒のように固定することで、フレームから垂れ下がっているシートを更に持ち上げようという魂胆だった。
これが上手く行けば、リベルのシートリクライニングもカタログ値どおり110°は余裕なはず。
「まずは試してみよう。」
そして、調べたのが「では、どのタイプのベルトが手軽で、扱い安く、デザイン的にも良さそうか?」だった。
とりあえず、ベストセラー商品を探すことからはじめた。
この大量の候補の中から、
で絞り込んでいった。
するとメーカーとしては「三共コーポレーション」と「ビッグマン」が適当なブランドであると分かった。
さらに製品を取捨選択していった結果、たどり着いたのがこちら。
操作が簡単らしく、評価も高かったのでまずは買ってみることにした。
シートの背面部にベルトを回して締め上げる。
内側のフレーム同士でループを作る。
するとシート角度をフレームの角度に近づけることに成功する。
実際に子どもを乗せてみたら、、
悔しいぐらいに予想が当たり?
リベルの見違えた表情にほくそ笑む私。
「よし、これで万事快調!!」と思いきや、、
そう。冒頭にも書いたつもりだがここまでの背もたれサポートは、生後8ヶ月~17ヶ月付近の子のためのもの。
うちの子のように1歳6ヶ月(18ヶ月)の子どもには不要だった。
なぜ、そう言い切れるかというと、
どうやら垂直になりすぎて、お腹に圧がかかりリラックスしようとなんとかシート脇に向けて斜めにリクライニング姿勢を取ろうとし始める。
走行からものの20分後のできごとである。
で、荷締めベルト(シート背面部)をゆるめて元のリベルの角度に戻してあげると、、
センターに戻ってるし。。(笑)
この実験を通して分かったことがある。
それは、「子どもには子どもの発育の時期によってベストなシート角度があり、それをちゃんとメーカーは考えて設計しているのだな。」ということ。
例をあげると、
ベビーカー利用時期 | 背もたれ角度の十分値 |
---|---|
新生児~1歳ちょいすぎぐらいまで* *A型ファーストベビーカー時期 | 125°程度 |
生後7ヶ月~17ヶ月* *A型ベビーカー後期・B型ベビーカー前期 | 110°程度 |
18ヶ月以降~ *B型ベビーカー後期。筋肉あり、自分でできる | 120°程度 |
高級両対面式ベビーカーのシートリクライニング、特に海外ブランドのそれには回転式ユニットが内蔵されており、無段階調節式(紐式)のものと比べて垂直近くまで背もたれを起こせるものが多い。
それは恐らく、上記の表の真ん中(生後7ヶ月~17ヶ月)に美味しい機能なのである。
子どもが前を向けてルンルン楽しい!
そのためにわたしたちは高いお金を払っているのだと気付かされました。
このとおりA型とB型では簡単に分類できないゾーンの存在を知っておくことで、この限定的な時期をベビーカーの買い直しではなく、工夫で乗り越えられそうです。
結論:少し早めのセカンドベビーカー乗り換えでは背もたれの工夫で3台目知らずよ!
■ 記事で紹介した商品(荷締めベルトは「にしめべると」と読む)
では、
「YOYOでも使える?」
「イージーS2では?」
「ビングルだとどう?」
要望が10以上集まれば追加で検証したい。
安い買い物だし、手元のベビーカーで成果が出なくても利用価値ありのクオリティだ。
ちなみに私が背面式タイプでベストと考えている背もたれの角度(上体を起こす方)を備えているベビーカーはバタフライです。
食事の介助にはもう少しあってもいいのかもしれないけれど、ベビーカーは本来そういうものじゃないし、これ以上起こすと重心位置が前に移動することでハンドリング性能に影響したり、段差につまづきやすくなるからです。
荷締めベルトの常時使用はおすすめしません。
どうしてもベビーカー中で取らなければならない離乳食・食事の間だけがいいと思っています。
食事が終われば下げてあげないと腹圧が高くなりすぎて危険だと思う。
ちゃんと子どものことがわかっているブランドの商品ができることを願います。
他にもいろいろ
バガブー バタフライを見て、緩いという人もいるが私はそうは思わない。
きついリクライニングを本当に子どもが必要としているかは月齢による。
バタフライ程度が適当
YOYOとコヤのどちらも上記のリストに入れて構わないレベルだと考えている。
ただ、ずり落ちるという声は私も直接聞いていることだし、実際に私の三男を乗せた際にもそう感じたことがある。
これは欠点・欠陥なのか?
否だろう。
必要以上にずり落ちてしまうと感じる原因は座面のハリ感がしっかりしているから。
つまり、ズレ落ち防止のために無用に座面を後傾させたり、凹ませていないデザインのために起きている。
ではどうすればいいか?
簡単だ。
乳児期~1歳半頃まではレッグレストを水平に起こして子どもの脚をサポートしてあげて欲しい。
これだけで随分とずり落ちはマシになる。
コヤにはもともと付いているが、YOYOは公式にオプション商品がある。
これがあるからずり落ちは防止できる。
だから市販のバンパーバーはいらないと考える。
つけていると折りたたみも面倒になりますからね!
非公式のバンパーバーより俺は断然レッグレスト派だ
YOYOママにはぜひ覚えておいて欲しい。
国内メーカーの両対面式や背面式を緩いという人もいる。
確かに緩くみえます!
けれど、緩い=失敗でもない。
子どもは与えられたものの中で工夫して成長していく。
前を向きたくて、フロントバーを掴んで上体を起こす。
背もたれのサポートがなくとも。
そんな国内メーカーのベビーカーに座る、姿勢のいい子を何度も目にしてきた
詳しくは現代坐禅講義に取り上げられた子どもの坐禅を紹介した記事に書いていたけれど、前へずり落ちる部分さえケアできていれば、基本的には子どもの成長に任せるでいいと思っている。
この記事の課題はそもそも購入相談室でママさんからの「なんとかならないか?」のリクエストから生まれたもの。
それに応える形でアイデアを思いつき、改善を実証したわけだけど、ベビーカーを設計したメーカーが「それでヨシ!」と考えた標準の可動域を越えて調整を加えることのリスクも感じる結果となった。
A形ベビーカーの緩いは、乳児に特化した造り故のもの。
国内メーカーの両対面式やJoieの背面式コンパクト(ツーリスト、パクト)に見られるタイプですね
B形・C形ベビーカーの緩いは、体重の増えた子どもを運ぶさいの走行性優先に特化した造り故のもの。
後ろ重心だと段差も跳ね上げて越えていきやすくなる。
だから、あんまり神経質にならなくてもいいよ